周辺情報


「青い星通信社」が建つのは、おおよそ北緯44度32分30秒の地点。
赤道と北極の中間点である北緯45度のすぐ近くです。
そこには、日本の他の地域ではまず見ることができないような劇的な風景が広がり、
そしてその中で積み重ねられていく人々の静かな営みがあります。
そんな北の自然が紡ぎ出す心に刻まれるシーンや、
そこで育まれる味わい深い暮らしの息づかいと出会うことができる、
美深町周辺に点在する知られざる特別な場所をご紹介します。
そのいずれもが、旅の目的地となり得る美しい資質を備えているはずです。



函岳(はこだけ)


美深町と音威子府(おといねっぷ)村、そして旧•歌登町(現•枝幸町)の境界に位置する函岳は標高1,129m。利尻島(と択捉島)を除けば、函岳は日本で最も北にある1000mを超える山です。周囲に比肩される高さの山がまったくないため山頂からの眺望は抜群で、北海道の東西に広がるオホーツク海と日本海の双方を見渡すことができます。まさに360°の大パノラマ。晴れた日に山頂に立てば、その風景の雄大さが胸に迫るはずです。また函岳は、山頂まで車の通行が可能な道が続いているため、登山用具などを準備する必要もありません。美深町と旧•歌登町とを結ぶ、日本で最も長い未舗装のダート道である美深歌登スーパー林道(未舗装区間約35㎞)を経由して、美深町側の入口から函岳山頂までは約27㎞。この深い森の中を縫う林道を満たす独特の詩情も、訪れた人に長く記憶されることになるでしょう。

交通/「青い星通信社」から山頂までは車で約1時間30分(10月下旬から6月中旬までは山頂に続くゲートが閉鎖されます)

松山湿原


「あゝ秘境」という文字が記された石碑がある天竜沼駐車場から、登山道を約30分。標高800mほどの山のいただきに広がっているのが、松山湿原です。山の頂上にあるため、この湿原には川の水が流れ込むということがありません。ある条件下では微生物が活動できないために枯れた植物などが分解されないままに堆積し、それが水の流入ができない高さにまでドーム状に成長する場合があります。これを高層湿原と呼び、松山湿原は日本最北の高層湿原にあたります。この湿原には三つの沼が点在し、それを結ぶように回廊状の木道が造られていますが、山頂に位置するために周囲に視線を遮るものがなく、ただ空と草原だけが広がる中を風雪に白く洗われた木道が延びる風景は、まるで別の惑星を歩いているような、甘美な戦慄を訪れた者にもたらします。風の音だけが響く、そこは静寂の秘境です。

交通/「青い星通信社」から天竜沼駐車場まで車で約1時間、駐車場から登山道を徒歩約30分(10月下旬から6月中旬までは、天竜沼に続く林道のゲートが閉鎖されます)

トロッコ王国


村上春樹の小説『羊をめぐる冒険』の中では、舞台である十二滝町へは「全国で三位の赤字線」が通っていましたが、この町のモデルともいわれる美深町仁宇布地区へはかつて“日本一の赤字線”と呼ばれた旧国鉄美幸線が走っていました。起点の美深駅から終点の仁宇布駅まで、総延長21.2㎞。典型的な盲腸線(終点で別の路線と連絡することなく行き止まりになってしまう路線)でした。この美幸線は1985年に廃線となりましたが、しかし廃線から13年が経った1998年に「トロッコ王国」という名で再生することに。仁宇布駅を起点に往復10㎞の区間を、ゲストがかつて保線用に使われていたガソリンエンジンのトロッコを自ら運転して走らせることができる観光用の路線となったのです。白樺林の中を縫う線路を、風を切って疾走するトロッコの爽快感は特別なもの。走り去る風景に物語の残像が閃きます。

交通/「青い星通信社」から車で約35分(GW〜10月末の営業)

料金/大人1,500円

びふか温泉


美深の市街から車で国道40号線を北に15分ほど。「青い星通信社」と同じ美深町紋穂内地区に広がる「びふかアイランド」の中にある温泉施設が「びふか温泉」です。館内にはホテルとレストランを備え、日帰り入浴も可能(11:00〜21:00)。温泉に露天風呂は設置されていませんが、源泉温度20℃弱の冷鉱泉を加温したうえで満たした広々とした浴槽とジェットバス、さらにサウナも用意された大浴場は爽快感に満ちています。また「びふかアイランド」の広大な敷地内にはこの温泉施設のほかにキャンプ場やオートキャンプ場、道の駅などが点在し、道の駅には美深町周辺の特産品を販売する「双子座館」とレストラン「アウル」が設けられています。「アウル」は“インド人シェフ直伝”を謳ったカレーとナンのセットが名物。「青い星通信社」には大浴場の設備はありませんが、「びふか温泉」へは車ですぐの距離です。

交通/「青い星通信社」から車で約5分

料金/日帰り入浴大人400円

宗谷本線


旭川と稚内を結ぶJR宗谷本線は総延長259.4㎞。しかしそのうちで電化されているのは始発の旭川駅からの6.6㎞に過ぎず、路線の大半では単線の線路の上を、のどかな汽笛の音を響かせながらディーゼル車が行き交います。(時刻表に乗っている)始発列車から終列車が通過するまでの14時間余りの間に、上下合わせて15本の列車が美深町内を通り過ぎていく勘定ですので、宗谷本線の線路のほど近い場所にある「青い星通信社」からは、1時間に1本程度のペースではありますが、草原を行くディーゼル車の影を館内の窓から見ることができます。ちなみに、美深という町名はアイヌ語で“石の多い場所”を表す「ピウカ」が語源であるとされ、実際、1951年までは宗谷本線美深駅の駅名標には「美深」という漢字の下に「ぴうか」という平仮名が記されていたのだそうです。

交通/「青い星通信社」から美深駅までは車で約10分

仁宇布の冷水と十六滝


村上春樹の『羊をめぐる冒険』の舞台は十二滝町という架空の町でしたが、そのモデルといわれる美深町の仁宇布地区もとても滝の多い土地です。もともとアイヌ語で“木があるもの”という意味の「ni-u-p」に由来すると言われる地名がついた仁宇布は、森におおわれた山がちの地。その斜面を雪解け水が流れ下るために無数の滝が生まれるのです。住人に存在をよく知られている滝は「仁宇布の十六滝」と呼ばれていますが、なかでも深い森の中にぽっかりと開けた空間に現れる「雨霧(うぎり)の滝」は、その神秘的な空気がとりわけ印象的。さらにせせらぎの脇に造られた細い道を上流に5分ほども歩けば、より繊細な表情を見せる「女神の滝」にも出会えます。また二つの滝の手前には「仁宇布の冷水」と名付けられた豊かな湧き水が流れ出す崖があり、北の大地に降る雪がもたらした森の水の清冽さを味わうこともできます。

交通/「青い星通信社」から「雨霧の滝」の駐車場までは車で約1時間(10月下旬から6月中旬までは、二つの滝と冷水に続く林道のゲートが閉鎖されます)

BIKKYアトリエ3モア


美深町の北隣に広がる音威子府村は北海道で最も人口の少ない村ですが、同時に豊かな木材資源を生かした工芸の村としても知られています。それを象徴する施設が、現代彫刻家・砂澤ビッキ(1931〜1989)の記念館である「アトリエ3モア」でしょう。自らのルーツであるアイヌの文化の根底に流れる、自然との繊細な交感を木彫で表現した砂澤ビッキは、47歳のときに村の招きに応じて音威子府に移住、廃校となった小学校をアトリエとします。そんな味わい深いかつての木造校舎をギャラリーとしたのがこの施設で、館内には200点余りのビッキ作品が展示されています。風の音が響く長く延びた廊下や、“午前3時の部屋”と名付けられたアトリエ、さらに雄大な作品が微かな光の中に浮かび上がる真っ暗な展示室など、空間造形も変化に富んでいて感動的。ネルドリップの珈琲が味わえるカフェも設けられています。

交通/「青い星通信社」から車で約35分

料金/入館料大人200円

Pizza&Bar Bibliotheque

(ビブリオテーク)
2017年にオープンした、美深町では唯一といっていい素敵なピッツェリア。食材も調理法もバラエティに富んだアンティパスト、窯で焼き上げられる蕩けるチーズのピザ、そしてソースの深い香りも魅惑的なパスタと、メニューに並ぶのはいずれもスタンダードな料理ですが、一皿ひと皿のクオリティは高く、その味わいは本当に豊かです。また、店内の空気感も「ビブリオテーク」の魅力の一つで、古い民家を改装した建物はノスタルジックな木の表情を生かしながら、それでいてモダンでスタイリッシュ。アンティークな風合いのテーブルについてピザやパスタを楽しみながらワインのグラスを傾ければ、ここが道北であることを忘れてしまいそうにもなります。目立つ看板やサインも一切なく、静かな住宅街の中に身をひそめるようにして建つ、美しいフォークロアの舞台になりそうな一軒家レストランです。

交通/「青い星通信社」から車で約15分

営業/金曜〜月曜の14:00〜21:00(火曜〜木曜はレストラン営業は休止)

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北海道中川郡美深町紋穂内108番地
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